
(母になったばかりのハルカッコ・・・2008年5月7日、北海道・新冠にて)
日高へ行こうと決めた翌日届いたお年賀状に、体が固まった。
1頭の繁殖牝馬の消息、「昨年秋の離乳後に移動しました」。
4歳で繁殖にあがり、昨年初仔を産んだばかり。
まだまだ牧場にいられるもののと安心しきっていた。
翌日、日高行きのことも兼ねて、恐る恐る牧場さんに電話を入れてみたが
現実だった。
母馬のお腹にいるときからの付き合いだった。
牧場、育成場、競馬場へと弾む気持ちで会いに行った日のことが
つい昨日のことのよう。
初仔を連れた姿に安堵した日から、まだ一年も経っていない。
競走馬の宿命とはいえ、突然の別れにどうしようもなく気持ちは落ち込むばかり。
自分だけの胸にしまっておくには辛すぎて、新年早々暗い話で気がひけたが、
気心の知れた馬友達にメール。
馬友達からの優しい言葉に少しは落ち着いたが、悶々と気は晴れない。
ファンにはどうすることもできない現実。
何の力にもなってあげられなかった自分を責めるばかり。
しばらく空っぽの心が続いたが、突然、(自分の力でどうにもできないことは、現実を
見つめ、ありのままに受け入れるしかないでしょう)という声が、胸の奥から聞こえてきた。
現実をありのままに受け入れる・・・いくら辛くても競走馬と離れられない以上、
それしかないか。
そう思ったら、やっと少しずつ気持ちが楽になってきた。
思い返せば出会えたおかげで、どれほどの喜びと感動を味わえたことだろう。
短い期間だったけれど、想い出はあふれるほどにある。
宝石箱から大切な宝物をひとつ、ひとつ取り出しては眺めるように、
これからは、折に触れて面影を思い出そう。
誰か一人、その馬のことを忘れないでいてあげれば馬は浮かばれる・・・。
薄氷を踏むように生きる競走馬たちとの出会いは、まさに一期一会。
だからこそ、出会えた時間を大切にしなくては。
この別れで、改めてそのことを思い知らされた。
そして、日高のどこかで繁殖を続けているかもしれない、という淡い望みも
捨ててはいない。
美しい栗毛に美しい流星の牝馬が、今日も雪の中に佇んでいる姿が見える・・・。