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チモシーグラス

Author:チモシーグラス
がんを経験してみて、改めて生きるすばらしさに目覚めました。

大好きな馬のこと、愛猫のこと、草花のこと、健気に生きるさまざまな命の輝きを、四季折々に綴ります。


なお、当ブログ『チモシーファーム』の画像と文章の無断転用を、固く禁じます。


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馬の歩いた道

okutama081121-1.jpg
(眼下に光る多摩川。その昔、往来する馬も見たのだろうか
・・・2008年11月21日、東京・青梅「むかしみち」にて)


青梅の紅葉を楽しもうと、昨日、奥多摩駅から奥多摩湖までの約10キロの道を歩いた。
昨秋、御岳の川合玉堂美術館を訪れたのがきっかけで、すっかり青梅ファンになり
今年の秋も楽しみにしていた。

以前立川駅で手に入れた青梅の観光リーフレットを見ると、青梅には色々な
ハイキングコースがあってどれもよさそうだが、今回は『紅葉の奥多摩むかしみち』を
歩いてみることにした。
決め手は、コース地図に載っていた‘馬の水飲み場’。
どんなところなんだろう、どんな意味があるのだろう、興味津々。

リーフレットによれば、奥多摩むかしみちは、奥多摩の氷川から小河内に達する
旧青梅街道で、さらに小菅から大菩薩峠を越えて甲府に到ることから
甲州裏街道とも呼ばれていたという。

地図でみる限りは多摩川に沿ってくねくねとした道を歩くような感じで、楽勝じゃん!と
気楽に歩き出したら、とんでもなかった。
起伏のある山道をどんどん上り下りしていくうちに川はどんどん遠ざかり、
ほとんどは檜や杉木立が延々と続き、谷底にかすかに水の流れが見え隠れするばかり。
朝9時に出発して、お昼をはさんだとはいえ終着の奥多摩湖にたどり着いたのは
午後3時に近かった。

ハイキングコースとあって道はよく手入れされていたが、それでも山道は緊張する。
山際には落石防止ネットが張り巡らされ、いたるところに「落石注意」の看板。
眼下を見下ろせば柵やロープの一寸先は谷底まで続く急斜面、目もくらみそうになる。
しばらく歩いた頃、落石防止のフェンスを小さくくり抜いた岩場に、くり抜いた大きさの
丸い石碑が建っていた。

馬の霊を慰める馬頭観音だった。
当時は今よりもっと狭い道だったようで、すれ違うのも容易ではなかっただろう。
そんな危険な山道で、たくさんの馬たちが脚を踏み外して谷へ落ちて亡くなったので、
その霊を悼み慰めかつ通行の安全を祈るために建てられたと、立て看板に記されていた。

いきなりショッキングな馬の歴史に触れて、胸が痛くなる。

さらに進むと、『馬の水飲み場』があった。
その名のとおり、馬たちに水を飲ませるための大きな石をくり抜いた水槽があり、
山からの清水が竹管を伝っていた。

その昔、この街道を往来した馬力がここで休憩し、荷を解かれた馬はかいばを
つけてもらい、この水槽で水を飲んだという。
馬たちが首を延ばして並びながら、おいしそうに水を飲む姿が目に浮かぶ。
馬方も、近くの茶店で一服。
三軒の茶店があって、お茶やおまんじゅう、お酒も出したそうだ。
手前にあった廃屋がその名残りなのだろうか。
今は人影もないが、当時の賑わいが目に浮かぶようだ。

重い荷を背負って、厳しく長い道のりを歩いてきた馬たちはここへたどり着いて
さぞほっとしたことだろう。
でも、ここへたどり着くことなく谷底に落ちた馬もいただろう。
逆にここでほっとしたのも束の間、命を落とした馬もいただろう。

そんなことを思いながら山道をたどると、いつしか当時の道を歩いているような
錯覚になって、馬たちの蹄の音やいななきが、山の中から聞こえてきそうな気がした。
山道を歩いた馬と聞くと、やはり木曾馬や同じような体型の馬だったのだろうか。
粗食に耐え、丈夫で温順な日本の馬たちは重要な働き手だった。
馬たちがいたからこそ栄えた人間の歴史、馬の犠牲の上に栄えた人間の歴史・・・
気軽なハイキングのはずだったのに、健気な日本の馬たちへの思いがとまらない。

秋晴れの青梅は、鮮やかな紅葉が青空に映え、満々と水を湛えた奥多摩湖が
きらきらと光っていた。
そして「むかしみち」は、昔の馬たちに想いを馳せ今の馬たちを見つめなおす道筋を
つけてくれた。

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